都条例改定に反対声明続々! 日本ペンクラブ、図書館協会など
(『創』編集長・篠田博之)
本日夕方5時に発表したのだが、この起草などで一昨日から昨日、私(=篠田)も忙しかった。今回の規制強化はマンガが狙い撃ちされているのだが、この問題をマンガだけでなく表現に関わる作家やジャーナリストが全体として受け止めて反対していこうという意志を示すためには、日本ペンクラブが声明を出すことは大きな意味があった。ペンクラブでは私が副委員長を務める言論表現委員会と「子どもの本」委員会ですり合わせを行うところから始め、様々な人が意見交換しながら声明文を練っていった。大きな組織であるだけに、緊急でこういう作業を行うのは大変なのだが、執行部始め大勢の人が力を尽くしたおかげで何とか本日発表にこぎつけた。
●東京都青少年条例改定による表現規制強化に反対する
現在、東京都議会で審議されている青少年健全育成条例の改定案に対し、出版界の主要な団体やコミック作家などが強い反対の意を表明している。表現に対する規制強化の意味を持つ今回の条例改定については、日本ペンクラブも危惧を表明せざるをえない。青少年条例による規制は、直接的には青少年への販売や閲覧を制限するものとされるが、それが表現全体に影響を及ぼすことは明らかである。
そもそも性表現といった個々人によって受け止め方が異なる、デリケートな事柄については、国家や行政による法的規制や取り締まりを極力排し、表現者や出版社等の自律による自主的規制などによって対処するのが好ましいことは言うまでもない。
今回の条例改定については、今日に至るまで、十分な市民的議論に供せられることもなく、表現に関わる規制強化という重大さに比して拙速に事が運ばれている印象は拭えない。また、「非実在青少年」といった恣意的な判断の余地がある造語によって、表現行為が規制されることが好ましくないことも言うまでもない。さらに、改定案の中に含まれるインターネットの規制についても、公権力がフィルタリング基準に関与することにつき、活発な議論を通した上での合理的なコンセンサスが得られているとは、到底言えない。
表現に関する規制は、歴史的に見ても、恣意的な運用や拡大解釈の危険性が排除できず、表現の自由と、ひいては民主主義の根幹に関わる重大な弊害をもたらすおそれがある。なぜいま表現規制を強化しなければならないのか、納得のいく説明もないままの今回の条例改定について、日本ペンクラブは強く反対するとともに、同様な改定を予定している各地方自治体や政党に対し、開かれた場において冷静かつ慎重で十分な検討をすることを強く求める。
2010年3月18日
社団法人日本ペンクラブ 会長 阿刀田 高
次に日本図書館協会が昨日発表した声明だ。→こちら
さらに日本雑誌協会と別に小さな出版社が集まって作っている出版流通対策協議会も本日付で声明を出した。
●東京都青少年育成条例の改定に反対する声明
2010年3月18日
出版流通対策協議会
会長 高須 次郎
東京都文京区本郷3-31-1 盛和ビル40B
TEL 03-6279-7103/FAX 03-6279-7104
1 今回の都の青少年条例改定には、すでにある児童ポルノ規制の範囲をこえて、実在しない 児童を描いたマンガ等を含めて拡大解釈され、規制強化をしているのは、表現の自由を著し く損ねる恐れがあり、反対である。「非実在青少年」に関わる性表現を不健全図書指定に追加 してはならない。
2 都民に「児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する」とあるのは、権力による恣意的 運用の危惧があり、逮捕、えん罪の起こることの疑念がある。そもそも児童ポルノの定義が 曖昧なままでの単純所持の新設は、過去に入手した出版物を破棄しなければならない義務が 生じ、梵書そのものとなり、到底容認できない。かつて国会において、児童ポルノ処罰法が 上程されたが、単純所持の処罰化に疑義が呈され、廃案になったことをふまえるべきである。
3 「表示図書類に関する勧告」については、すでに出版業界は成人向けコーナーで区分陳列 (ゾーニング)の自主規制を行っており、現在の条例でも「不健全図書」の指定対象になっ ている。新たに不健全図書指定を公表する必要はない。
これだけ多くの団体が次々と声明を出していくのは久々で、今回の問題への危機意識がいかに大きく広がったかを示すものといえよう。