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東京都で性表現規制強化の条例改定が山場に!

京都議会で性表現規制を狙った条例改定の動きが山場を迎えようとしている。

全体の動きや問題点については、『創』2010年1月号で長岡義幸さんがレポートしているが、このバックナンバーがアマゾンで定価の3倍でオークション売買されていたため、弊社ではアマゾンに在庫を入れて正規料金で購入できるようにした。弊社のホームページからももちろん購入可能だ。
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都議会をめぐる攻防については、15日の週が山場のようで、集会なども予定されており、今後もこの『創』ブログでレポートする予定だ。以下は長岡さんのレポートだが、東京都が提出した条例改定案もクリックすれば読めるようにした。
(『創』編集長・篠田博之)

    *    *    *    *    *



京都青少年問題協議会(都青少協)が法律の改定に先行して児童ポルノの単純所持規制をはじめるべきだとする議論を行い、青少年条例を強化する準備が進められていると『創』1月号「児童ポルノ法、青少年条例など性表現規制強化の動き」の記事で報告した。
その後、都青少協は1月14日、青少年条例の全面強化を求める答申を都知事に手渡し、これを受けて、青少年条例を所管する東京都青少年・治安対策本部は、3月24日開会の都議会に条例改定案を提出した。
改定案の全文は、こちらをクリック。

条例改定案を読んでの感想は、予想にたがわず、現行の流通規制を大きく踏み出し、徹底した表現規制の意志を露わにしたものだった。
18歳未満の「非実在青少年」の性描写が描かれていれば「不健全」図書に指定し、言うことを聞かない出版社には「勧告」「公表」をすると脅しをかけ、国会でも議論のある児童ポルノの単純所持禁止にかかわる条項を設けて法規制の後押しをし、青少年の描かれている「青少年性的視覚描写物」の「まん延」防止を目的に、青少年を性的対象として扱う「風潮」を助長させないための「気運の醸成」を官民で行う責務(義務)を課す、などというものだ。

青少年条例による図書規制は、「性的」「残虐性」「自殺・犯罪誘発」という3類型のもと、青少年の目に触れさせないために「不健全」図書を指定し、18歳未満への販売を禁止する(流通規制)というのが建前だった。大人が購入して読むことは何ら問題ない。
ところが、改定案では、「年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から18歳未満として表現されていると認識される」創作物で、「強姦等著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写」したものを「不健全」図書に指定するとした。

指定には至らない「みだりに性的対象として肯定的に描写することにより、青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害し、青少年の健全な成長を阻害するおそれがあるもの」は、18禁マーク付の「表示図書」にするよう出版社や自主規制団体に勧告できるようにする条文もある。マンガ・アニメなどの創作活動で描いてはならない表現をあらかじめ条例で決め、結果的に、大人向けの創作物であっても、このような描写は禁ずるということだ。販売規制・流通規制どころか、内容規制(出版規制)そのものだ。

条文が拡大解釈されれば、以前から冗談交じりに言われつつ、そんなことはあり得ないとされていた「ドラえもん」のしずかちゃんの入浴シーンのあるコミックスは、区分陳列の対象になる「表示図書」にして子どもには売るな、と勧告されるかもしれない。永井豪の「ハレンチ学園」などはもってのほかだろう。
1999年の児童ポルノ法施行時に、18歳未満の性交場面が描かれていた「バガボンド」や「ベルセルク」「あずみ」などのコミックスを一部の書店が販売自粛するという出来事があったが、これらの表現はほんとうに禁止対象になるおそれがある。

いや、高校生のけだるい日常を描いた山本直樹の名作「Blue」(光文社版)は、1991年、すでに学校内のセックス描写があったという理由で東京都が「不健全」図書に指定している。
当時、「有害」コミック問題を考える会のメンバーが山本直樹さんを誘って指定理由を東京都に聞きに行き、私も同行取材した際、都の職員が説明したことだ。その後、版元は「Blue」を回収し、掲載誌のひとつであった「Comic Be!」(光文社)は休刊(事実上の廃刊)になった。
条例改定案が成立すれば、このようなことは頻発するに違いない。過去の名作も読めなくなってしまうだろう。

もちろん、問題のある表現は存在する。だが、実在の青少年が表現されたわけではなく、あくまでも頭のなかの妄想を表現した創作物だ。こういうことは考えてはならないと公権力がたがをはめることが許されるわけがない。
そもそも、法と道徳を分離するのが近代法制の根本原則のはずだ。「まん延」防止や「気運の醸成」などという気分で、行為を伴わないにもかかわらず、性道徳まで条例で規制するのは倒錯も甚だしいのではないか。
こういう言い方は最近流行らないようだが、公権力が表現の自由に干渉するのは、いうまでもなく憲法違反だ。内容に問題があれば、私人間の問題として、書き手や発行者に要請したり、市民的議論を尽くせばいい。

児童ポルノの単純所持禁止の責務(義務)を定めた条項も非常に危険だ。とりわけ児童ポルノ法第二条第三項の3で定義されている、いわゆる3号ポルノ「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの」とのかかわりだ。

昨年6月26日の衆議院法務委員会での審議では、過去のミリオンセラーである宮沢りえ写真集「Santa Fe」が児童ポルノにあたる可能性が取りざたされている。
サンタフェ

  <<< 『Santa Fe 宮沢りえ』

条例改定案では、「児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延抑止に向けた都民等の責務」を定めた第18条の六の四で「何人も、児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する」と書かれていた。
他の条文では「都民」としているにもかかわらず、この条文だけはなぜか「何人」とされた。東京都以外にも効力を拡大させたいという意志のあらわれだろうか。

現在も「Santa Fe」を手もとに置いている100万人以上の人々はいずれ廃棄を義務づけられ、保存していれば犯罪者扱いされかねない。写真家が保存するネガや紙焼き、出版社の在庫、図書館の蔵書にも累が及ぶかもしれない。
1999年の児童ポルノ法の施行時に一部の書店が販売自粛したタイトルには「本上まなみ写真集」もあった。このような写真集も、都条例では、現実に児童ポルノと見なされることになるかもしれない。

ネット関連では、青少年向けの携帯フィルタリングの強化を事業者に課し、親が同意してフィルタリングを申し込まなかった場合は、そのときの書面の保存を義務づけたり、事業者に対する立ち入り調査権を認めたり、青少年のネット利用によって「自己若しくは他人の尊厳を傷つけ、違法若しくは有害な行為をし、又は犯罪若しくは被害を誘発したと認めるとき」は、保護者に対して知事が直接、指導・調査なども行えるとしたりと、まさに何でもござれ状態だ。

もう少し詳しく見ると、携帯関連の事業者に対する調査などは「知事が指定した知事部局の職員」と限定する一方、青少年のネット利用にかかわって「違法」「有害」な行為などをした場合は「知事は、前項の指導又は助言を行うため必要と認めるときは、保護者に対し説明若しくは資料の提出を求め、又は必要な調査をすることができる」と書き、指導などを行うのは誰なのか明記せず、何らの縛りもない。言われるままフィルタリングを外し、子どもを厳しくしつけなかった親は、警察が懲らしめるという意図でもあるのではないかと疑わざるを得ない。

実は、改定案の条文をよくよく読めば、ほかにもこういった細かいところで、妙な条項がある。

条例改定案は、3月30日の本会議で最終的に決まるものの、3月18日の総務委員会で審議され、19日に委員会採決が行われ、この時点でほぼ決着がつくことになる。その前哨戦として、3月12日の予算特別委員会では民主党の松下玲子都議が改定案を質す予定という。
また、民主党の西沢けいた都議、浅野克彦都議などの若手議員は、はやくから条例改定反対を鮮明にし、行動しているところだ。共産党も反対方向という。

石原都政の野党会派である民主党、共産党、生活者ネット、自治市民'93が一致して反対すれば条例改定をとめることができる。
業界団体や表現の自由の侵害に危機感を持つ市民の動きも加速している。東京都の暴走によって、全国に表現規制を波及させないためにも都条例改定を何とか食い止めたい。


(フリーランス記者:長岡義幸)



*青少年条例の動向についてはポット出版の『出版時評 ながおかの意見 1994-2002』の第二章・図書規制の実情/青少年条例強化をめぐって、第七章・出版物を取り巻く規制/青少年条例と法的規制の動向、
出版メディアパルの『出版と自由』などで詳しくフォローしています。ぜひ参考にしてください。
*私も一部を(ペンネームで)執筆した創出版の『「有害」コミック問題を考える』、さらに『誌外戦』は、20年前に青少年条例の強化によって起きた図書規制の実態を知るための基本図書といってもいい内容です。



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