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3月18日の都議会総務委員会で行われた議論・2

前記事からのつづき)
一方、浅川参事が読み上げたジュニアアイドル誌の「著しく扇情的なもの」の基準は、かなり詳細かつ露骨なものだった。

※ 性器、肛門若しくは乳首(以下「性器」)若しくはその周辺部(陰部、臀部及び乳房)を殊更に強調し、又はその衣服若しくは水着等の上から認識できるように性器等若しくはその周辺部の形状を殊更に浮き立たせた姿態
※ 飲食物その他の物品を用いること等により、性交又は性交類似行為を容易に連想させる姿態
※ 青少年の性器等若しくはその周辺部を他人が触り、又は青少年が他人の性器等若しくはその周辺部を触る姿態
※ 前3号に掲げたもののほか、衣服の全部又は一部を着けず、又は水着のみを着けた状態にある13歳未満の者の姿態であって、その描写がこれらの基準に該当するものと同程度に扇情的なもの


東京都は、未だに青少年条例の改定案そのものを市民が容易に閲覧できる形で公開していない。規則案は、小山議員が質問しなければ、知ることのできなかったことだ。

議員はもとより、市民に判断材料を提示しないまま、条例を強化されたのでは堪ったものではない。

に質問に立った自民党の吉原修議員は、
「改正案は社会の常識を規定したものにすぎない。このようなものを放置することが続くと、マンガ・アニメの作家や出版社も社会から大きな批判を受けるのは当然」
「今まで表現の自由を奪われた出版社はあるのか。ないのではないか」
と発言し、改定案に賛意を示した。

公明党の大松あきら議員は、
「一般書店で誰でも読めるようになっている。誤った性道徳を植え付けることになる」
と主張。近代法制の原則からは遠い、法と道徳の「融合」を説いた。

共産党の古館和憲議員は、「(実在の被害者の存在する)児童ポルノは絶対に容認しない」としつつ、
「新たに非実在青少年のような創作物の規定を設けたが、当然、表現の自由を侵害されると多くの人が心配している」
「ほとんどのマンガ・アニメは、論理で描けない何らかの感情を表現するために創作されている。捉え方や感じ方は人によって違う」
などと発言して条例改定案に疑義を呈した上で、次のような質問をした。

古館「マンガの登場人物が、自分の年齢を18歳といえば、非実在青少年と見なされないことになるが、それでいいのか」

浅川「そのような理解になるものです」

古館「非実在の人間に規制の網を被せることに無理がある」

古館「マンガ・アニメ等において、性的描写を見た青少年が性に関する健全な判断能力を阻害するという学問的知見はどのようなものがあるのか」

浅川「なかなかいま現在は見いだせていないものです」

古館「科学的根拠をもって証明されていないのに、28期青少協答申や条例の提案者は阻害すると断定しているから、そのことを聞いた。多くの人々がそう思っているから条例改正の合意が得られると考えている、というのが都の言い分。それでいいのか。過去の芸術作品でも、断罪された後、後世、貴重な財産となったものがある。人間の表現行為に対する規制はきわめて慎重であるべきだ。マンガの表現と、現実の子どもの権利侵害との関係は証明されていない。どのような表現が逸脱行動につながるのか、科学的に証明することはできない。改正案はあまりに拙速で、表現の自由にとって危険。表現の自由を萎縮させることになりかねない」

浅川「我々が想定しているのは、科学的証明がなくとも、子どもを守るためにやらなければならない蓋然性があればやってもいいと考えている」

1964年の東京都青少年条例の成立した際、朝日新聞は社説で「気休めにすぎないにしても、気休めを必要とするのが、現在の青少年問題の実態である」(7月29日付)と書いた。
「蓋然性」という不確かな言葉で条例改定を正当化するのは、40年以上前の「気休め」から何も変わっていないことを露わにしたようだ。

生活者ネットワークの西崎光子議員は、現行条例の不備を突いた。

西崎「指定取り消しと異議申立のルールはあるのか」

浅川「条例には規定を置いておらず、通常の行政処分不服申立ができる。いままで申立は1件もない」


マンガ家の山本直樹さんの作品『Blue』(光文社)が1991年に「不健全」指定されたことがある。
山本さん本人や当時、図書規制に反対して活動していた「有害」コミック問題を考える会のメンバー、コミケの代表だった米澤嘉博さんらが東京都の青少年課に指定理由を尋ねに赴き、私も同行取材をした。このとき、都の職員に「指定に異議があるときはどのような手続きをすればいいのか」と私が質問したところ、「条例には手続きが書かれていないので、行政処分不服申立ということになると思うが、作家個人というのは難しいかもしれない」とのことだった。

宝島社は2000年、「不健全」図書指定を憲法違反だとして処分の取り消しを求める行政訴訟を提起した。
このとき東京都は、「不健全」図書指定には処分性がないとして、訴訟を門前払いするよう主張。2003年には地裁で、2004年には高裁で、宝島社は敗訴となり、終結したものの、裁判所は処分性については認める判決を下している。
少なくとも、地裁判決のあった2003年まで、東京都は出版社による行政処分不服申立を受け付けていなかった。作家個人、あるいはマンガ愛好者による不服申立は、現在も取り合わないのではないか。

静岡県青少年条例は「一般からの申し出」の項で「何人も(中略)取消しをすることが適当であると認めるときは、知事に対し、その旨を要請することができる」としている。

出版社はもとより、作家や市民など「何人も」異議申立ができるしくみをつくらなければ、浅川参事の説明は無意味だろう。

続けて西崎議員は次のように質した。

西崎「健全育成審議会が非公開だ。青少協の答申案に対するパブリックコメントも公開されていない。情報公開を進めるべきだ」

浅川「健全育成審議会は、不健全指定候補の図書を詳細にみるため、傍聴を制限している。青少協のパブリックコメントは主な論点を公開した。すべてみたいという開示請求があれば適切に対応したい」

民主党の西沢けいた議員は、青少年課にパブリックコメントの閲覧を求めたところ、他の案件では行政当局が議員に詳細を説明していたにもかかわらず、青少協の答申案に対するパブリックコメントについては、情報公開条例による開示請求を行わなければ見せられないという対応を取ったという。西沢議員は情報公開の手続きを取ったものの、開示の可否を決定する期限である14日後、さらに決定が延長され、審議の参考にできない状態になってしまった。
「適切な対応」をしているのかは疑問の残る答弁だ。

また、青少年健全育成審議会の実態については、『ず・ぼん』7号(2001年、ポット出版)「東京都青少年健全育成審議会の場合 『有害』『不健全』図書は誰が、どうやって決めているのか」で詳しく書いているので、参照してほしい。
ポット出版のサイトに全文が掲載されている。2001年当時の条例改定の審議内容について、民主党や共産党、生活者ネットに対して厳しい文面もあるが、今回の各会派の姿勢は評価できるものと考えている、とフォローしておきたい)

西崎「七生養護学校の性教育が行き過ぎていると批判された。児童ポルノ規制が拡大解釈されて性教育の規制に拡大することはないか」

浅川「性教育教材は児童ポルノには該当しない」

七生養護学校では、障碍のある子どもたちにわかりやすく性教育を行うため、性器のついた人形を使って性交や妊娠の説明をした。
これを問題視した都議らの追及によって、都教委は人形などの教材を没収し、関係した校長や教職員を(別な理由で)処分した。校長に対する処分はこの2月、裁判で取り消されている。西崎議員の質問には、このような背景があった。


(つづく/以上、長岡義幸[インディペンデント記者])

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テーマ : 青少年健全育成条例改正案
ジャンル : 政治・経済

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ジュニアアイドルはあまり見た事ないのでわかりませんが、
※ 飲食物その他の物品を用いること等により、性交又は性交類似行為を容易に連想させる姿態

というのは、こちらは創作物で言う直接的な性行為及び性交類似行為などすらもなく
それを連想させる事にまで問題にしているのが危険だと思います。
そもそもアイドルって、自らのセックスアピールをファンに見てもらうのが仕事なわけですから
セクシャルな姿態でエッチな連想をするのは当たり前の事なんではないでしょうか。
彼ら彼女らもそのアイドルを目指してやっている事なのですから、過剰な性への悪視は彼らの権利を奪う事だと思います。

しかもこんな連想させるという表現で適応できるとなれば
今度は当然創作物にも持ち出したりする事もありえるわけで
何々を連想させるから規制、とか別にエロ以外の内心の自由にも踏み込んで
適応させられていく事が目に見えます。

浅川氏(都側)は早速嘘を付きました

ジュニアアイドル関係において、答弁していた浅川氏(都側)は早速嘘を付きましたね。


なぜなら、
http://n.m.livedoor.com/a/d/4566067?f=100

での都の担当者側のインタビューや、
「第十八条の六の五」の条文内容から、十三歳未満(小学生以下における過激なものと考えられる商品)とあったのに、今回の議事録にある「前3号に掲げたもののほか」というニュアンスが入る以上、それに限定されていないという事になるからです。

また、13才以下だろうが以上だろうが性行為や虐待記録で無いにも関わらず、思い込みや主観だけで保護者等に対して自制させるように行政が土足で各家庭に介入する事は倫理的に反しますし、被写体自身の自己決定権や行動の権利を侵害する事になります(もちろん行政だけでなく、あかの他人(都民や国民)も同じです)。


もう一つ気になったのは
>性器、肛門若しくは乳首(以下「性器」)若しくはその周辺部(陰部、臀部及び乳房)を殊更に強調し、又はその衣服若しくは水着等の上から認識できるように性器等若しくはその周辺部の形状を殊更に浮き立たせた姿態

です。
これは場合によっては被写体に対しての差別行為であり被写体を傷付ける事になります。
なぜなら、個人によって体系が異なるからです。
現に、オーストラリアではAカップの女性(もちろん18才以上)がAVに出演するのは児童を連想するので禁止になっています。
これと同じ事をやろうとしている訳です。


以上の事から、行政側がむしろ人権侵害や倫理観に欠ける行為をしていると言えますし、こんな事をする人達に「人権保護」という言葉を使う資格はありませんし使って欲しくないですね(もちろん行政だけでなく、賛成している都民や国民も同じですよ)。
カウンター (2010-3-23より)
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